むしとりあみ
むしとりあみを抱えて飛び出していく子どもではなかった。わたしは落ち着きはらって、彼らの動きを見ていたかった。けど、「男らしいあそびをしなければならない」ー。むしとりあみを持たなかったら、遊んでくれなくなっちゃうのかな。だからわたしはむしとりあみで、ざりがに、ばった、せみ、などなど。ただ見ていたかったものを捕まえて、彼らが見なくてよかった風景を。感じなくてもよかった痛みを。私が男になるために、彼らはヒトならば耐えられない仕打ちを受けたのです。むしとりあみで。 .........
やっと今私は男になるのを諦めている。その世界には必ず、彼らが見た風景や感じた痛みに相当するものがあるのだ。私は今や、あみの中にいた彼らでもある。
(小学4年の頃)